ワイルドリフト /dev: バランスの調整と維持
バランス調整をテーマとした/devシリーズ第2回となる今回は、リードバランスデザイナーのAlex “Wav3Break” Huangが担当します。第1回はこちらで、チームメンバーの紹介やバランス調整の総合的な方針についてお話ししています。
「攻撃力-5?それじゃ使い物にならないって!」「なんでゼドをナーフ(弱体化)するの?みんなゾーニャの砂時計買えばいいだけなのに!?」パッチでバフ(強化)やナーフを検討する際、私たちはおもちゃの占い水晶玉(めっぽう当たる!)に問いかけるだけではなく、大量のゲームプレイデータを参考にしています。
今回の記事では、バランス調整の基本的な思考プロセスにスポットライトを当て、生まれたばかりの新タイトル「ワイルドリフト」の初期段階におけるバランス調整の方針を示してみようと思います。
変更対象はどんな基準で決めているのか?
前回の投稿でJonathanが書いたとおり、ワイルドリフト の各パッチで変更する内容を決める際にはPC版LoLと似た戦略を採用していきます。ほとんどの変更は、ランク戦の各スキル帯におけるチャンピオンの勝率やバン/ピック率といった評価基準の差を考慮して決定されますが、変更の方向性や規模は問題の性質によって変わります。
たとえばアーリが、高スキル帯の試合ではある程度バランスの取れた状態にある一方、低スキル帯ではかなり不遇な状態にあるとしましょう。このような場合は低スキル帯に焦点を当てつつ、他のスキル帯への影響を最低限に留めるような変更を検討していきます。こうして目標が定まると、バフ対象としてはマナ自動回復量などが挙がってきます。低スキル帯のプレイヤーにとっては影響の大きなバフになりますが、高スキル帯のプレイヤーはマナ管理の技術が高く影響が少ないと想像できるためです。
とはいえ、目標とする結果を出すため選択肢が複数個存在することは珍しくありません。先ほどのアーリの例で、今度は低スキル帯と高スキル帯でビルドするアイテムに大きな違いがある状況を想定してみましょう。この場合、アーリのステータスやゲームプレイ要素を調整するよりも、おすすめアイテムセットを調整するほうが優れた解決策である可能性があります。こういった方向転換が考えられるケースでは、ゲームデザイナーがアーリにおける最初に購入するアイテムごとの勝率を調査・分類して裏付けとなる証拠を集め、チームに提案することになります。
ワイルドリフトはまだまだ新しいタイトルなので、評価指標を算出するためのデータもサンプルサイズが不十分で信頼性に欠けることが多く、競技シーンのプレイヤーもまだチャンピオンプール(得意とするチャンピオンの数や幅)を広げている真っ最中です。これは要するに、変更内容が実際の状況と「ズレ」てしまうリスクが大きいことを意味します。このような事情から、変更内容に確信を持てないような状況においては、基本的に私たちが最善と思われる方向性に沿って変更を加えるものの、変更幅は小さくすることもあります。
新しいタイトルであるため、私たちは未だにプレイヤーが好む・嫌う要素についても理解を深めている最中です。メタ(主流チャンピオン/戦略の傾向)を読み解き、勝利につながる新しい戦略を構築できるというのは実にワクワクするものですが、バランス調整チームとしては「データ上は公平に見えても対戦していてまったく楽しくない戦略」が出現した場合に解決できるよう常に準備をしておかなければなりません。ただし同時にバランス調整がみなさんのクリエイティビティを抑圧するような事態は避けたいと考えているため、この種の変更は評価に時間がかかる傾向があります。
今後の予定は?
いつもの定期的なバランス調整以外では、PC版LoLがここ数年で改善を進めてきた主要ゲームプレイシステムの一部、特にエレメンタルリフトとドラゴンソウルの両システムを導入する方向で検討を進めており、現在はワイルドリフトに落とし込む方法を模索しています。実現までにはまだまだ時間がかかりますが、今後もしっかりと進めていきます!
ただ、私たちはPC版LoLと完全に同じシステムにすることを目指しているわけではありません。そもそもマップが違う、処理能力の制限もあるなど理由はたくさんあります。しかし同時に、LoLプレイヤーがサモナーズリフトで得た知識をもっとワイルドリフトで活かせるようにしたいとも考えています。現在は、後日実装予定のエレメンタルリフト/ドラゴンソウルシステムの基本的な仕組みをPC版LoLに近いものにすることで、この点を実現できればと考えています。
またご存じの方もいるかもしれませんが、PC版LoLには近々アイテムシステムのリワ―クが入る予定です。この変更の大半はしばらくワイルドリフトにはやってきませんが、現在の「クールダウン短縮」要素をPC版LoLの新要素「スキルヘイスト」と入れ替える変更はかなり早い段階で行う予定です。この新要素だけを先に導入するのは、クールダウン短縮の40%という上限を比較的低コストで撤廃できるためです。この変更の導入後、ワイルドリフトのアイテムセットはシーズン2020のPC版LoLのアイテムセットからクールダウン短縮上限を撤廃したようなものになるでしょう。こちらの変更については、ワイルドリフト独自の面白いビルドが生まれるようなものになることを目指していきます。
現時点で私からお話できる内容は以上となります。ワイルドリフトのバランス調整は裏側でどんな事が行われているのか、少しでもお伝えできていれば幸いです。今後もバランス調整やバグ修正は継続的に実施していきますので、パッチノートのチェックはどうぞお忘れなく!