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トーナメントに関する発表はこれまでも行ってきましたが、トーナメントを超えた「目標」についてはお話しできていませんでした。そこで今回は、ワイルドリフトeスポーツ部門のヘッドが競技エコシステムに対する彼のビジョンや哲学について語ります。

皆さんこんにちは、ワイルドリフトeスポーツ部門のヘッドを務めるLeo Fariaです。今回は私から本作のeスポーツに関する展望や計画をお話ししてみたいと思います。それではさっそく始めましょう!

なぜワイルドリフトをeスポーツに?

LoL eスポーツでは10年という歳月をかけて確かなエコシステムを確立できました。だからこそ、ライアットが新タイトルをリリースすれば新たなeスポーツエコシステムも合わせて構築するだろう予想していた方も多かったのではないでしょうか。しかし、ワイルドリフトのeスポーツ化は長い時間をかけて検討に検討を重ねた末に下した判断でした。今回は、判断するに至った理由を皆さんと共有したいと思います。

eスポーツには「プレイヤーが対象のゲームをもっとプレイしたくなる」ようにするという重要な役割があります。尊敬するプロを見て「自分もああなれるかもしれない」と思う気持ちは、プロスポーツ選手に対する憧れと同種のものです。人は、誰かが凄いことをしているのを見ると情熱に火が灯り、自分もやりたいと感じるものです。ただ私たちは、ワイルドリフトのプレイヤーがPC版LoLのプロを見てもこのような作用が自然に生じないだろうと考えます。プレイしているゲームが違いますし、多くのワイルドリフトプレイヤーにとってゲーミングデバイスとはモバイル機器を指しますから。

そして何よりライアットゲームズにとってワイルドリフトのプレイヤーはPC版LoLプレイヤーと同じように重要な存在です。だからこそ私たちは、ワイルドリフト単体で成立する、PC版LoL eスポーツから独立したeスポーツエコシステムを構築することにしたのです。「リーグ・オブ・レジェンド」のエコシステムから学べることは多いでしょうが、ワイルドリフトeスポーツは決してLoL eスポーツへの導入路ではありません。これはライアターの総意でもあります。ワイルドリフト世界王者が手にする感動と栄誉が、PC版LoLの世界王者と同等のものになること。それが私たちの究極目標です。

ワイルドリフトeスポーツへの興味と関心は非常に高く、2019年に本作を発表して以来、インフルエンサー、プロチーム、パートナー、メディアからは「ワイルドリフトのeスポーツ展開はするのか?参加条件は?」という内容の問い合わせが何度となく寄せられています。これを無下にするのはコミュニティーに存在する「競争を求める炎」を消してしまうことに他なりません。

私たちはこれらすべての要因を鑑み、ワイルドリフトeスポーツに全力で取り組み、そして実現すると決心しました。やるからには「良質なモバイルeスポーツ」の意味を再定義するつもりです。ライアットが持てる製作、創造、運営の能力をすべて注ぎ込んだものにしていきますので、ぜひご期待ください。

でもどうやって?

まず触れておくべきは、モバイルeスポーツのイメージが国や地域によって大きく異なるという点でしょう。モバイルeスポーツはアジア各地で非常に人気があり、他のプラットフォームよりも成功しているケースも少なくありません。しかし私たちはその先…世界中に本作を届け、「ワイルドリフトを世界初の、本物のモバイルeスポーツタイトルにすること」を目標とします。この目標を達成するため、私たちはまず西洋地域(南北アメリカ、ヨーロッパ、および中東)への大規模な投資を実施していくつもりです。また国際大会の開催地についても、これまであまり選ばれてこなかった地域を選んでいきたいと考えています。また、もちろん中国や東南アジアといったモバイル市場が圧倒的に強く需要の高い地域でも施策を迅速・積極的にしかけていきます。

世界的なモバイルeスポーツの確立とは、プレイヤーがいる場所に出向くことと根本的には同義です。私たちは現時点でも「モバイルeスポーツとは将来的に成立するもの」ではなく「今あるもの」だと考えています。信念を持って長期的に取り組み、何世代にもわたり愛される競技へと育てていくこと。それが私たちの方針です。

ワイルドリフトの競技化に際しては特に注視している要因がふたつあります。「視聴体験としてのeスポーツ」と「参加体験としてのeスポーツ」です。ライアットゲームズでは、全タイトルを「プレイして楽しい」ものにしようと心がけていますが、コミュニティーの中には視聴するほうが楽しいという方もいらっしゃいます。従来のスポーツと同じですね。そしてワイルドリフトの試合で盛り上がる瞬間は「視聴して楽しい」ものになると確信しています。熾烈なチームファイト、流れを変えるバロンスティール、想定外のバックドア…そのどれもが、ハイペースで繰り広げられる試合観戦を盛り上げてくれるはずですから。

今回の発表後、私たちは当面プロシーンに注力していくつもりです。これは長年にわたるLoL eスポーツの運営から得た「競技化を成功させるには安定性が何よりも重要」という教訓を活かしての判断です。まずトーナメントを定期的に開催し、長期的な存続が確実だとチーム組織に信頼してもらい、参入したチームが優れたプレイヤーを集め、それがプレイヤーにとってプロ入りという選択肢を現実的にしていく、という好循環を目指していきます。プロとは存続するという前提があってはじめて成立するものですから。もちろん将来的にはアマチュアトーナメントにも注力していきますが、先述の理由から、当面は競技シーンの最上位領域を確立することに全力を尽くしていきます。

また、これと並行するかたちでスマートフォンでのeスポーツ視聴体験も改善していく予定です。現在のeスポーツ観戦は──全体の40%が画面の小さなモバイル機器で視聴しているにもかかわらず──モバイル機器向けに最適化されているとはいえません。プレイヤーの大半にとって主な(あるいは唯一の)視聴環境がモバイル機器であることを考えると、優れたモバイル視聴体験を提供できるかどうかはワイルドリフトというタイトルにとって極めて重要な問題です。スマートフォンひとつでプレイと競技観戦の両方が楽しめる世界を実現するべく、私たちも全力を尽くしていきます。モバイルeスポーツが業界を一変させる存在であるならば、視聴体験も同様に進化させたいですからね。

モバイルeスポーツの確立というのは私たちにとっても新しい試みなので、今後もたくさんのことを学ぶ必要があるでしょう。ビジョン自体に自信はありますが、すべてを実現するには時間がかかることも肝に銘じておかねばなりません。すべてはまだ始まったばかり。また次回、皆さんに進捗を共有する日を楽しみにしています。また、地元地域で開催されるトーナメント情報や今年後半に向けたニュースもどんどん公開されていきますので、ぜひチェックしてくださいね!